数十人の小学生を前にして、「この子たちに何を渡せるだろう」と考えることが増えた。

息子の少年野球チームでコーチをしている。来年度からはチーム全体の運営部長も引き受けることになり、相変わらず週末は忙しくしている。

運営部長の仕事は、毎週の日程調整、全体への展開、配車や審判等の役割募集と管理、会計、備品調達などかなり広範にわたり、多くの責務を担う (歴代の部長には頭が上がらない…)。

過去はこれらのすべてをLINEでやり取りしていたが、私にその運用能力がないことは自明だったので、今はシステムを作って多くを自動化した。その話はまたどこかで。

今回は自分の息子を含め、数十人の小学生チームに対してどのような指導方針で接しているか。日々考えていることを書き留めておく。

監督の方針 is King

  • 大前提として、チームの指導方針は監督に従う。コーチの役割は監督の方針が最大化されるよう、フォロワーとして動くことと捉える
  • 監督の方針を大まかに言うと「当たり前のレベルを上げて、そのスタンダードの高さが自然と発揮されることで勝利を目指す」という理解をしている。挨拶、準備、片づけ、声出し、走って集散。こうした基本動作の水準を引き上げつつ、基礎技術や野球のスタンダードを高めることが、結果的に試合の強さにつながるという考え方
  • この方針を自分なりに咀嚼したうえで、監督が日々何を意図して指導や発言をしているのかは、できるだけこまめにすり合わせる。今年はパパコーチも多く監督も頼ってくれているので、会話の機会が増やせそう

基礎運動能力 is Queen

  • 監督の方針が King として、子どもたちのこれからのスポーツ人生を支える基礎を作るという意味では基礎運動能力の向上は Queen だと思っている
  • 監督から私個人への具体的なミッションとして、子どもたちのフィジカルの向上、基礎的な運動能力の底上げを請け負っている。毎回45分ほどのプログラムをデザインしてリードさせてもらっている。この取り組みについては以前の記事に書いた
  • フィジカルのプログラムは自分の知識や経験を活かせる領域なので、ここは大きく任せてもらっている。直近のテーマは骨盤と股関節の可動、そして正しい姿勢で動作できるようにすること
  • 子どもたちの動きが目に見えて変わっていく手応えがあり、こちらも楽しい

監督の目が届かない瞬間を拾う

  • コーチとして特にフォローが必要なタイミングは、監督の目や言葉が届かない瞬間
  • 典型的なのは、監督がある子に1:1で具体的な指導をしているとき。このとき、他の子どもたちはフリーになる。監督が個人に伝えた内容が、チーム全体にも共有すべきものかどうかを判断し、必要に応じて広げる。個人の癖や弱点に関する技術指導はその子限りにとどめるが、声の出し方や走る姿勢など全員に当てはまる行動規範は迷わず全体に広げる
  • 試合中、ベンチで集中力が切れている下級生のフォローもしかり。そもそも遊ばせないように声をかけたり、試合の展開を一緒に追いかけたりする。むしろ子どもたちが監督に話しかけに行ってしまうこともあるので、できるかぎり積極的に拾う
  • 練習前後の準備や片づけに消極的な子へのフォローも同様。こうした「チームに求められる社会性」は、監督が掲げるスタンダードにつながるので、ちゃんと伝えていきたい

フィードバックのスタンス

  • 今の子どもたちと接していると、課題の指摘やネガティブフィードバックに慣れていない子が多いと感じる。親御さんと話していても、強いフィードバックをあえてしない教育方針のご家庭は少なくない
  • 他方で、私はせっかくこのチームでスポーツに励むのであれば、何かしら人間的な成長を持ち帰ってもらいたいと思っている。自分の息子に限った話ではない
  • そのため、特にチームの規律に関わる行動についてははっきりとフィードバックする方針を取っている。この方針は先日監督とも会話してちょうど摺合せを行った
  • 全力で走らない、声を出さない、仲間のプレーを見ない。こうしたことに対しては、その場で改善を促す
  • 賛否はあると思う。ただ、自分自身を振り返ると、学生時代に得られた強めのフィードバックほど、いまだに効いている事が多い。一番好きな言葉は「主語は自分」。あのとき何も言われなかったら、気づけなかったことがたくさんある。
  • こうした経験があるので、フィードバックをしないことは「無関心の現れ」と捉えている。子どもたちへの愛情があるなら、しっかり伝えるべきだというのが私のスタンス
  • ただ伝え方は子どもや状況に応じて調整する。とくに低学年や入部したての子たちへの伝え方は、かなり気をつけている。響く言葉は一人ひとり違うし、タイミングも重要。ここは正解がなく、割といつも悩んでいる

指摘と承認はセットで

  • フィードバックした後のフォローは、指摘そのものと同じくらい意識する。厳しく伝えた子が、次の場面で良い行動を取ったら、それを見逃さず声をかける。指摘と承認はセット
  • 前述の通り、ネガティブフィードバックに慣れていない子が多い世代だからこそ、指摘単体では萎縮して終わりやすい。承認とセットにすることで、指摘が「攻撃」ではなく「期待」として受け取られる
  • 「あのとき言われたことを、できたじゃん」。この一言があるかないかで、フィードバックの吸収度はまるで違う

息子との距離感

  • 自分の息子に対する距離感には気を使っている。コーチとしての自分と父親としての自分は、意識して分けるようにしている
  • チーム内で息子を特別扱いしない。逆に、父親だからといって必要以上に厳しくもしない。他の子と同じ基準で接する
  • ただ私も人の親なので、試合で息子がいいプレーをしたら、裏でこっそり褒めたりグータッチしたりする。だって親だもの

子どもたち同士の関係

  • 子どもたち同士の関係については、あまり介入しないようにしている
  • チームは学年を超えて関係が密で、上下がない。子どもたちの間で良い関係ができているように見える。大人が過度に介入するより、彼らに任せている
  • 子どもたちが自律的に良い関係を築けていること自体が、監督の目指す「スタンダードの高さ」の延長線上にあると思う

こうして書き出してみると、結局のところ自分がやろうとしていることは一つに集約される。子どもたちに「チームで野球に没頭する経験」を渡すこと。技術 (は、そもそもわからない)や勝敗の先にある、チームスポーツに本気で取り組む場に身を置く経験。チームを卒業した後にも何かしらの記憶や経験が活きてくれたら、コーチ冥利に尽きる。